2014年3月20日木曜日

なぜ公募校長ではダメなのか

 また大阪市の公募校長が一人更迭されたそうです。


 教頭が口論の末に土下座も・・・ 大阪市の公募校長を更迭(ヤフーニュースより)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140320-00000505-san-soci


 これまで、大阪市の公募校長制度では、3ヶ月で「自分のキャリアと合わない」という理由で辞めた人や、セクハラ校長が更迭されていますが、それらに引き続いての3人目です。

 今回の校長は元新聞記者で、更迭理由は教職員や保護者からのクーデターだそうです(苦笑)


 さて、教育行政に詳しい吉家孝太郎さんに言わせれば、「公募校長制度は絶対にうまくいかない」と断言できます。


 そもそも、公募校長制度というのは、


 ①各学校に特色ある取り組みとオリジナリティを出したい。

 ②そのためには、リーダーシップと権限ある校長を創出し、彼に引っ張っていってほしい。

 ③その人材として民間から多様な分野で経験と実績のある人を公募しよう。


という意図で企画されている制度です。


 ところが、理念は良いのですが、実際には、この考え方が「学校運営・学校行政」とそもそも合致していないのです。




 どう合致していないかは、次の「学校のしくみ」を読めばすぐわかります。


①学校のふつうの先生は、大学卒で採用されてから最初の学校は田舎・もしくは小さな学校へ行かされる。

②ふつうの先生は、何度かの転勤を経て、だんだん希望が叶うようになる。たとえば都市部へ行きたいとか、実家の近くに戻りたいとか。

③ベテラン先生になればなるほど、その学校に籍を置く年数が長くなる。(転勤せずともよい)

④初心者が5年未満だとすれば、ベテラン先生の勤続年数は10年~15年も可能。



ここまでがふつうの学校の先生の場合。で、ここからが管理職。


①教頭でも副校長でもいいが、管理職への道はとりあえず試験を受ける。

②教頭になったらまず、小さい学校か田舎の学校の「教頭」として赴任する。

③教頭の任期は3年程度、何校か転勤したら今度は校長試験を受ける。

④校長として、また小さい学校か田舎の学校に赴任する。

⑤校長の任期も3年程度。学閥や派閥等にもよるが大きい学校や都市部の学校へ転勤する。


ついでに、お金の管理ができる「事務方(学校事務)」についても。


①学校事務員は、3年程度の短い任期で転勤する。(お金を扱うので、汚職防止のため)

②事務長になっても、やっぱり3年程度の短い任期で転勤する。


 なんとなくわかってきたでしょ?


 つまり、その学校のことを一番わかっているのは、「その学校に長く勤務している一般ベテラン教員」であって、校長でも教頭でも最長3年しか勤務しないので、たいしたことはできないわけです。

 なので、校長がリーダーシップが取り易い学校というのは「田舎の小さい学校」であり、だからこそ某お辞めになった公募校長が送りこまれたというわけです。


 逆に大きな学校や都市部の学校では、すでに長くいる教員が「これまでの伝統や流れ」を取り仕切っていますので、校長が大きな改革をしようとしても「実績が出ない」し、ベテラン教員から見れば、

 3年ぐらいゆるゆると抵抗していれば、あいつはすぐいなくなる

とタカをくくっているということになります。



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 というわけで、学校のトップである校長を「あれこれいじってみても」無駄です。では、真の学校改革とはどうすればいいかというと


 全ての教員を3年ぐらいの短期で異動させる


こと以外にありません。


 これで校長の実権が増しますし、その学校に「長く在籍している」教員もいなくなるので、改革は即浸透します。


 ところが、本気でこれをやろうとすると


 教員組合とガチンコバトルが勃発


することは確実です。


 なぜか?今度は、先生の立場になるとこれもすぐわかります。大学を卒業して、最初の学校で5年、次の学校で5年くらい経験し、いよいよベテランの仲間入りということで「本人の希望が通り易くなり、かつ長い間その学校にいられる」とすると、ちょうど3校めくらいで


 家を買う(定住する)・子供が小学校・中学校へ通う


ということが落ち着いてできることになります。それが3年スパンになると「子供はいつも転校」「いつまでも教員住宅」「つぎつぎに引越し」ということになり、


 そんなんいやだ!


とすべての教員が言い出すからです。組合員じゃなくても、ふつうのノンポリ教員でも嫌だと思います。


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 今言ったようなことは、すべての教育委員会・教育庁はわかっていますので、つまり元々


 校長公募性そのものが、某市長の思いつきか、もしくはポーズ、パフォーマンスに過ぎない


と思われても仕方ないわけです。


 いやあ、教育ってほんとうに面白いですね。















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