2017年7月29日土曜日

教員の部活動問題が、本音と建前で180度違う理由



 ここのところ教員の部活動問題が、教育界の内外で話題になっておりますが。


 簡単に言えば、部活動の指導はボランティアであるのに、それが半ば義務化されているのが実態で教員のブラック労働の温床になっている、という話です。


 そこで、一部の志ある若い教師からは、


「労働としてきちんと手当てされていないものであるならば、部活動を指導するしないの選択権を持てるなど、何がしかきちんとした体制がほしい」


という要望が上がっているわけで、逆にまた


「部活動の指導が労働の一部であるならば、給与面や労働時間についてきちんとした体制がほしい」


とも言っているわけで、これは確かにまったくもってその通りで、部活問題が「労働問題」として議論されることは



 大いに正しい



と私も同感します。



 ところが一方で、部活動にどう当たるべきか、という現実の現場サイドでの話で言えば、上記のようにきちんと体制が作られているわけではなく、


「先生方に置かれましては、部活動は労働ではないのですが、そこはうまく対応して、なんとか指導に当たっていただきたい」


という校長からの、お願いだか命令だかよくわからないままの無言の圧力によって、今日も明日もすぐには変革されず部活が続いていることは、みなさんご承知の通り。



 そんななか、ちょっと面白い記事がツイッターに上がっていて、





ソラさんのツイート

https://twitter.com/SoraEduJapanese/status/890923567495249920


これはかなりRTされているツイートなのですが、要するに



 大学で教員志望を指導している元校長が、


『部活動の職務は、教員の職務なんだから、やれったらやれ』

『勤務時間後の部活指導は、校長によるお願いによって、教員が分担してするものだ』

『わしらも若い頃からずっとやってきたので、たぶん変わらんよ』


という旨の指導をしたという話です。





==========

 
 勤務なのか、ボランティアなのか。勤務時間と部活指導時間はどのように労働時間として扱うか。


 上記のような議論は、おそらく労働基準法に基づいて精査すれば、おのずと答えは出ます。


 ところが、そうならないのは、建前はともかく教員の世界にはいろいろなウラ事情があるからです。



 そのウラ事情として


(『なぜ教師は部活動を辞められないのか』
https://kotaro-yoshiie.blogspot.jp/2015/10/01.html



の中で、「部活動の指導実績が評価に直結するから」ということを説明しました。



 今回は、この補足事項を「校長目線」でお話したいと思います。



 学校の教師が、どのように評価されるのかは、上の記事でもある程度書いています。しかし、現実には、勤務年数によって、実際の評価はある程度横並びですから、教師が現実問題としてどのように評価されるかは



 どの勤務校へ移動できるか



以外にはありません。あとは、指導主事になって教頭になるとか、そういう出世の話は別ルートです。



 そうすると、教師がどの学校へ次移動するかは、教育委員会とやらが決めるわけではなく、



「各学校のトップである校長たちが合議して決める」


のです。


 つまり、教職員一覧表がまず存在し、そこからある学校で、どの教科やどのポジションの教師が抜けるのか(異動対象になっているか)を検討するわけです。

 今度は、抜ける側の校長からするとはないちもんめがはじまるわけで


「あのこが欲しい あのこじゃわからん ♪ 相談しよう そうしよう ♪」


というそれぞれの教師というコマのやりとりをすることになるのです。




 その異動させ、動かし、ぐるぐる回すコマには、要素があります。




 第一の要素は、もちろん中高教師では「教科」です。年齢はあまり関係ないです。

 (基本的には、年齢が高い教師は、いわゆるいい学校や都市部へいける可能性は高いが、『田舎・郡部校のリーダー的存在として行ってくれ』ということも多々あるので年寄りでもOK)



  第二の要素は、ある程度の「経験」です。学年主任をやったのか、生徒指導部長などの分掌のリーダーを経験したか、などですね。




  そして、第三の要素は、「部活動の指導実績」なのです。だから、校長からすれば、人事異動でどの教師をひっぱってくるか、あるいは放出するかの重要なファクターになるため、この切り札が使えなくなることは非常にマズいことになります。





 従って、校長経験者であればあるほど「部活動の指導は重要な仕事なので、文句を言わずにやりなさい(→それがあなたの将来のためなのです)と言わざるを得ないのです。




 校長同士も実はマウントしあっていますから「どの学校で校長をしたか」はものすごく大きな人生のテーマだったりします。




 そして、校長としての一番の腕の見せ所は「人事異動」なので、


「どの分掌のベテランや力のある教師を引っ張ってこれたか」

「どの部活動のベテランや力のある教師を引っ張ってこれたか」


によって、校長としての実力が左右される、ということになっています。



 間違ってはいけないのは、校長は学校内の「内部の人事」については、基本的には「教頭もしくは副校長の意見を最大限尊重」します。


 そこに口を出す校長は、「懐がせまい」と思われるので、校長は「校外との人事」に全力を傾けます。




 こういう事情をしっておくと、どうして部活動問題が本音と建前でぐちゃぐちゃになるのかがよく理解できると思います。

















0 件のコメント:

コメントを投稿